昔の夢 1 


 瀬戸の花嫁 

 
 
海苔(のり)巻きには、ご存じの通り太巻き、中巻き、細巻き等がある。
店によって断面が四角形と丸形の巻き方がある。
 
私は子供の頃から、断面が丸い海苔巻きを食べていたので、
四角い海苔巻きは、どことなく高級品と思える。

そのほかに、手巻き寿司がある。手巻き寿司の海苔は
海苔を斜めに切った方が巻きやすい。

納豆巻き、シーチキン巻き等名前を聞いて内容が判断出来る寿司はまだ良い。
カリホルニア巻き は名前からは想像出来ない寿司だ。 

知り合いに瀬戸内海の小島の出身で吉田 まき さんと言う方がおられる。
彼女の結婚式には二度ばかり出席したが、いつも 瀬戸の花嫁 ともてはやされる。
人生、一度や二度の失敗は付きものである。
 
先日、電話があり 面白い話を聞いた。
 
彼女の今度のご主人は、原さんと言われる方でバスの運転手をしておられる。
家族は2人の男の子と女の子が1人である。(長女は連れ子?)

家族そろって回転寿司を夕食にと出掛けた時の話である。

その日は月末の金曜日とあって結構込み合っていた。
御多忙に漏れず、席待ちの紙に名前と人数を書き込み、待つこと10分余り。
次は私たちの番と駐車場に遊びに行った次男を呼び寄せた。
 
その時である。店内に響きわたるホール係嬢の声、

原 まき さん!』  『 腹巻き さん!』 と高らかに響き渡った。
 
店内の御一同様の視線を一気に浴びて 言われるままにテーブル席に付いた。

その後、次男は、その回転寿司には行こうとは言わなくなった。

その事があってからは、彼女は回転寿司やレストランの記名には旧姓を使用しているらしい。
そう考えると、あそこの記名は、好き勝手な名前でも良いのである。
 
たとえば、ことぶき(寿) つかさ(司) でも
海苔巻(のりまき) 銭平(せんべい) でも結構それらしい。
諸君も寿司屋向けのペンネームを考えてみるのも面白い。

とは言っても、銀行ではやはり実名を使用しない訳にはいかない。 
彼女名義の預金通帳は、未だ 『 原 まき 』で銀行の呼び出しは、
 
相変わらず 『 腹巻き  さん!』 である。
 
彼女が夫婦別姓運動に参加する様になったかは、知る由もない。
 
日本中の まき さんへ!
 
結婚相手には、伊達さん、さん、さん、篠田さん は選ばない様に?
 
全国の若いお父さんへ..............
 
女の子に名前を付ける時は、将来、結婚相手の名前を選ばなくて良い名前を付けてあげてください。
 
追記:加奈子なんて名前も、注意が必要である。大場さんとは、結婚しない方が良いのでは?
中田 ルミ(なかだるみ)さんも要チェックですね。
 
 


 ジャグラー 

 
 
寿司を食べる時に、箸を使う方と手で食べられる方がおられる。
圧倒的に箸で食べられる方の方が多い。
 
しかし、寿司通を称する諸氏は、熱いおしぼりで指の先まで綺麗に拭きながら
カウンタ越しに職人と会話を楽しみ寿司を摘む。
 
なかなか絵になる光景である。
 
私の持論であるが、世界中で道具(箸、ホーク、スプーン等)を使って食事をしている人間と
手を使って食事をしている人間とでは
道具を使わないで食事をしている人間の方が多いと思う。(?)
   
寿司職人も寿司を素手で握るが、機械作りの寿司(例えば軍艦巻き)等は
職人以外でも容易に作れる時代に成っている。
 
アルバイト氏やパート嬢が製造する時は、ナイロン製の手袋を使用する。
 
しかし、衛生的も度が過ぎるとアメリカの何とか州の様に寿司には一切素手でさわれない法律もあるそうだ。
 
職人が景気付けに手をパン、パンと鳴らしながら、(景気付けでの意味もあるが、手酢を切る目的)
寿司を握っている様子は見ていても気持ちがよい。
 
衛生手袋をしていては、あれは出来ないだろう。
これが、日本の食文化だと言わぬばかりの世界を再現してくれる。
  
日本で素手で触ってはいけないと言う法律が出来たとすると
寿司屋で、へい!お待ち!と衛生手袋の手で出されたときには興ざめする。
かといって、衛生手袋をやめて、手術用の手袋は、さらに興ざめする。
 
やはり、素手に限る。
 
海外の怪しい日本レストランで寿司にホークとナイフが附いてきた事もあった。
そのレストランは五目ラーメンではホークとスプーンが付いてくる。
  
日本でも、この様なおかしな光景は、つい最近まであった。
 
新幹線の食堂車で、ライスを食べるのに、ホークを裏返し、
ご飯を乗せて食べている紳士を見かけた事がある。
いくら揺れが少ない新幹線でも一寸無理があるのでは無いか。

 
実に巧みで、華麗な食事風景であり、ジャグラー的人物である。


  
寿司にコーラの時代もそろそろやってきた。
寿司皿の横にガラスコップとストローは似合わない。やはり、厚手の湯のみが良く似合うと思うのは、
 
団塊の世代 だけか。  
 
 


 ケセランパサラン 

 
 
回転寿司はよく食べに行くが最近はある物をもって出掛けることにしている。

子供の頃の思い出で辛(から)い物といえば、父親が何かの会合(町会議員選挙の寄り合い等?)で
手みやげにもらってきた海苔巻きの紅生姜と
にぎり寿司の烏賊(いか)のわさびである。

回転寿司でもサビ抜きを子供向けとして注文に応じたり、
その旨を表示して回っている皿が有るが、
サビたし、サビ増し、10倍サビなる寿司皿は待っていても回って来ない。

一昔前に、エスニックブームというのがあった。
この時以来、日本人は辛い物好きに成ったのであろうか。

トムヤンクンなどと聞いたことのない料理名が日常会話に話され
キムチにおいては、キムチの浅付けの素とか称する物までスーパーで見かける。

最近は さらにエスカレートしている。どうして測ったのかは、不明であるが、
10倍とか20倍とか表現され、果ては100倍の辛口のカレーを出す店まである。

カレー、トムヤンクン、キムチなどの辛さのベースは基本的に唐辛子であるが、
いったん辛い物好きに成ってしまうと、もう止まらない。

気付くと辛い物好きが増えている。
何を隠そう、小生はブーム以前からの辛い物好きである。

小生宅には、粒胡椒や岩塩などからカルダモンに至るまで
香辛料が食器棚にはびこる始末と成った。

ガラムマサラにおいては、愚妻に何度教えても
ケセランパサランとしか聞こえないらしい。

斯くして、今日は回転寿司の日と事前に判明している時はチューブ入り練りわさびを
持参する羽目となってしまった。

やはり、鼻につんと抜けるわさびの味は格別である。

寿司通に言わせると、醤油の付け方も五月蠅(うるさ)い らしい。
しかし、醤油もたっぷり付けて寿司を食う方が旨い。(個人的味覚)

ざるそばに つゆをあまり付けずに食べるのが通だと聞き及んでいるが、
小生はそば通にも、なれない様である。

では、寿司通のわさびの適量はどの程度か。
職人は万人に合った適量を握っているらしい。
 
ただ、この量は寿司が発明されて以来の伝統的な量ではないかと思われる。
やはり、時代と共に変化すべきである。

回転寿司屋さん、せめて、練りわさびをカウンタに置いて下さい。
 
エスニック寿司にご協力を。
 
 


 ヘミングウエー 

 
 
かって、7、8年前にカリフォルニアのキーウエストなる所へ出掛ける機会があった。
同行したグループは特別寿司が好きな人間の集まりでもないし、
寿司関係の人間でもなく雑多な集まりであった。

しかし、日本を離れて3日と経過していないのに、アメリカンフーズはどうしてもと言う諸先輩が
日本食が食べたいとの希望で無理矢理ガイド氏を引っぱり出し、いかにも、日本をもじったと思われる
バンブーレストランで寿司を食う羽目となった。
 
日本食=寿司と言う発想である。

この場所は、文豪 ヘミングウエーが往年愛した気候の穏やか(?)な避暑地である。

寿司が恋しいといっても、日頃、寿司を頻繁に食べてる連中が寿司を食べたいと言うのなら納得もするが
月に一度か多くて2度しか、それも回転寿司にいく程度であろう。
 
寿司なぞ食ったことの無い連中がいきなりアメリカに来てまで寿司が食いたいと言い出したのには驚いた。

我が輩は、アメリカ食の方が好みである。折角、米国に来たので国内ではまだまだ
高値の花のステーキを満喫したいが、小生が一番の若輩であり鞄持ち役。

確か上にぎりを注文し、待つこと1時間余り。やっとテーブルに運ばれて来た。
ここで、主人の蘊蓄(うんちく)を聞かされる。

マグロは築地からの冷凍空輸で、カルフォルニア沖 で捕れたクロマグロとの事。
??????
何でカルフォルニア沖で捕れて、築地から冷凍空輸するの?
疑問???

なんでも、マグロを捕まえると背びれに日本商社のスタンプが押して有るとかで
アメリカ国内でマグロを入手出来ず築地から仕入れる訳。

カルフォルニアと日本を往復したマグロを日本から来て食べるこの醍醐味は、
アレキサンダー大王がカスピ海で捕れたキャビアを砂漠を横断して運ばせてまで、食べた、
はたまた、加賀の殿様が氷室で冬の氷を夏まで保存し、かき氷にして食べたと同様な、
ばかげた状態でマハラジャ気分 が味わえる。

結局、ヘミングウエーの行きつけのレストラン(店名?)にも行けず、真っクロマグロの味だけが、
カルフォルニアの味として、脳裏に焼き付いた。
 
                                 


 ノーパン回転寿司 

 
 
最近見つけた たち寿司屋の評価記事に
『 へたな 回転寿司よりずっと美味しい たち寿司の店が・・・・・云々』と言う行(くだり)がある。

これは、言い換えれば『へたな たち寿司より、回転寿司がずっと美味しい』と言うことになる。
最近は、TV、週刊誌などで回転寿司が話題になり、にわか回転寿司通が多くなった。
 
確実に寿司の食べる回数が増加している。
  
回転寿司側からすれば、たち寿司は王道であり、職人もたち寿司職人が回転寿司職人に転職などすれば
同業者から身を落としたと、馬鹿にされても仕方がない。
 
しかし今この記事で世間の評価が変わっていると感じさせられた。
 
先日、TVで たち寿司で経営不振な店が回転寿司に改装する様子を放送していたが、やはりそこに
出演していた職人も葛藤を乗り越えて回転寿司の職場に飛び込んで頑張っていた。
 
彼の寿司は最初、回転寿司では、売り物にならない寿司であったかもしれないが、
寿司職人の魂がこもっている。あの番組を見た視聴者はきっと彼の寿司を食べたいと思ったはずだ。
  
一時、ノーパンしゃぶしゃぶなるものが有名になったが、ノーパン回転寿司が出来るかと期待したが
日比谷に出来たとは、聞いていないが、もし、こんな寿司屋を作るのなら、寿司は包装寿司を使用して頂きたい。
 
O-157など食中毒の問題もこれから多く発生するだろう。
O-157が発生すると営業停止になるが、ここで冷静に営業停止のメカニズムを考えてみよう。
そもそもO-157の菌は、イクラや、貝割れ大根(?)が汚染されていたもので、
寿司屋には何の責任も無いのでは無いか?
 
寿司屋は被害者的存在である。
 
どんなに、衛生管理をしても このくじを引いたら負けである。
(それにしても、返品イクラを再出荷するとは、なにごとだ!)
 
客側もその辺(くじを引いてしまったこと)を理解してやりたい。
しかし、まずい寿司を食べさせられると怒りたくなる。店長に『 食って見ろ!』と言いたくなる。
寿司に気配りが無いからだ。
  
寿司ロボットを使っていても、職人までがロボット化する必要は無い。
あの職人も確か軍艦巻きの機械と格闘していたが、彼は、ロボット化はしていない。
 
1カン、1カン愛情がこもっている。
 
某ハンバーグ屋の様に、マニアルを重視するのも結構である。
ただ、サンプルの写真の様にハンバーグを造るには、愛情が無いと出来ない。
味の評価をする前に流れてくる寿司の顔を見る。
 
寿司が泣いているか笑っているかで、味が判る。
 
料理評論家の諸先生などは、たぶん回転寿司には行ったことなど無いであろう。
寿司の評論が出来ないからであろう。回転であろうが たちであろうが寿司はネタで味が決まる。
調理の工程が比較的単純であり、評価が終始ネタの話になってしまう。
 
事実、回転寿司の番組でもネタの紹介で時間稼ぎをしているようである。
 
寿司を泣かすも、笑わすも職人次第である。
 
一般的に寿司を笑わすのが上手な職人はネタにこだわる傾向があるようだ。
ネタにこだわって寿司を泣かしている寿司屋なんて見たことも聞いた事もない。
 
ここで小生のこだわりを紹介する。
 
回転寿司のドアーを開けたら最初に職人と目で会話を交わす。
店内の様子など後で確認すればよい。
 
具体的には、以下の如くである。
 
店長は、貴方が駐車場に車を入れた時から貴方が何人のグループで来たか、
初めての客か、どこに座らすか、コンベアの寿司は大丈夫かなどと考え、タイミングを取り
さあ、ドアーが開く。
 
今だ、『 へい! いらっしゃい 』 と声を掛ける。
この声には、やはり誠意をもって目で答えよう。
 
仕事をしながら、客の顔も見ないで 『 へい! いらっしゃい 』の店は、さっさと敬遠する。
目の合った職人の前に座る。
 
これが、美味しい寿司の食べ方であろう。
 
美味しい寿司を沢山食べてください。                
 

参考

 


 乱立 

 
 
よくある話であるが回転寿司の乱立により、
回転寿司屋どうしが非常に接近して建設されている状況が多々有る。

流石(さすが)に、パチンコ屋さんやラーメン屋さんの様に隣り合って建てられたとは、未だ聞き及ばないが、
お向かい同士は日常の事である。
 
このシチュエーションでは、たいがい悲惨な明暗に分かれる。

だが、意外に両店とも元気(元気寿司の事ではない)に営業中であるのは合点がいかない。
明暗ははっきりしているだけに、第三者がいらぬ心配をする。
 
だが、本当に噂の繁盛店の寿司は美味しいかと疑問が湧く。

一般的にネタの良い店は当然、原価率も高い。その分、薄利多売となる。
ちょっと儲けさせてと品質を落とすと、客の舌は敏感で噂が噂を呼び
名誉回復にはなかなか時間が掛かるものの様だ。

美味しい寿司は食べたいが繁盛店の入り口には客の行列が出来、列についてまで食べる気はなくなる。
若い内は良しとしても、中年の諸君にはいささか、一寸位 まずくても待たずにゆっくり寿司を味わった方が
精神的に良いだろうと、自分に言い聞かせる。(家族に言い聞かせる)
 
江戸っ子は気がみじけーんだ。

満員電車じゃあるまいに肩をぶつけて寿司を食らうなど、回転寿司といえども閉口する。
せめて、ビジネスクラスのスペースとはいかないにしてもパチンコ屋の椅子のスペース位は欲しい。

加えて、家族連れの大群。  取った皿は返すな! と我が子にはいえても他人の子には言えない。
昔は、寿司屋に『 20歳未満の入場禁止 』 と警告が有った気もする。

寿司には日本酒が良く似合うそうである。お酒も出して!!!と、懇願しても繁盛店では飲みにくい。
結局、お向かいの閑散店で板前を貸切り状態で寿司を食う方が小生の美味しい寿司である。

これが、両店とも元気な理由かな と一人満足満足。

だが、本当に噂の繁盛店の寿司は美味しいのかな。