昔の夢 12


 回転寿司哲学論 


 
年末、年始はどこの回転寿司屋さんも、結構、混雑していた様である。
今年の一番の老山人の白日夢は、正夢 になる事を信じて出筆した。
  
あるデータに寄ると、全国の回転寿司屋さんの数は、4,500店 に達したそうである。
  
この調子では、今年中に5,000店を突破 するであろう。
  
又、海外への出店も相次ぐ反面、海外からの引き合いも多く、
回転寿司も、エスニック料理から脱皮する年になる。
 
今でも、主立った国際都市には、一軒や二軒の回転寿司屋さんがあるみたいで
来日の外人さんは日本に来る前に現地の回転寿司屋さんで回転寿司初体験を済ませている。
 
だが、やはり好みは、のり巻き系で中には豆腐の寿司(?)が好きとか、意味不明の答えも返ってくる。
たぶん、稲荷寿司の事であろうが、ひょっとすると小生の知らない寿司を開発したのであろうか。
 
今年はとうとう海外の回転寿司ブームが原因で国際的に回転寿司職人が不足してきた。
現在でも海外の求人案内に寿司職人の募集 が目立時代になって来ている。
  
のり巻きであれ、握り寿司であれ、寿司を造るには技術がいる。
いくら機械があるとは言え、多少の技術と知識が必要である。
 
生ものを扱う仕事であるので、
今年の一月一日からは免許制 となり素人が回転寿司業務を行ってはいけない。
と言う国際法が国際回転寿司連邦 で決議され実施され始めたのである。
    
料理学校の寿司科なんて物ではなく、
回転寿司大学を卒業しなければ回転寿司業務を行えなくなった。
  
そこで、急遽、国立回転寿司大学を設立する事になった。
 
回転寿司大学の講義内容は、基礎回転寿司学、回転寿司概要、回転寿司経済学、
回転寿司コンベアーの原理J、回転寿司皿歴、回転寿司栄養学、
回転寿司衛生基準法、回転寿司哲学総論、などがある。
  
実習の授業も用意されており、街の回転寿司屋さんへ出掛けて、
6ヶ月の実習経験 を強いられるのである。
 
この学校を卒業すると寿司職士の学位が授与され、希少食材のマグロをさばく事が出来る。
  
教授陣は、回転寿司屋さんの経験のある職人や、コンベアーメーカからの招待教授が多く
その中でも、回転寿司評論家の老山人教授 のゼミには、多くの学生が聴講を希望した。
 
学生食堂では、超大型の回転寿司コンベアが設置されており、100円均一の寿司が廻っていた。
研究生の作った焼きそば寿司とか、ラーメン寿司、餃子寿司は無料で食べられるが美味しくない
 
中でも、一番人気は、
学内の回転寿司コンテストで優勝した麻雀寿司 で、多くの学生が挑戦した。
麻雀寿司 とは、 回転寿司を14皿食べた後、
皿の真ん中の隠された牌の絵柄で役が出来たら無料になるのである。
  
好きな寿司だけを食べていたのでは、リーチには成り難いようである。
大三元 の達成者の賞品として、無料寿司券10万円分 が金色の寿司皿の上に用意されていた。
 
などと、くだらない白昼夢 を見ながら、お正月を過ごしてしまった。
 
 


 

 お愛想で〜す 

 
 
学校も冬休みに入り、忙しい回転寿司屋さんは高校生のアルバイト を雇い始めた。
今日、行ったお店のアルバイトはバイト初体験の高校2年生、久保君。
彼は店長の甥っこである。

バイトは初めてであるが、時々この店に回転寿司を食べに来ており、
店の事は、だいたい理解している。

バイト3日目であるが、帽子とエプロン、そして、胸に名札を付ければ立派なホール係 に見えてくる。

だが、まだまだ皿を数えて金額をお客さんに請求する事は出来ない。
 
お勘定の終わった皿を片づけたり、寿司以外のプリンやジュースを皿に載せたり
湯飲みやのぞきの補給等が主な仕事であったが、毎日が しくじりの繰り返し であった。

そこで、今日の しくじりを紹介 しよう。

3人の家族連れをテーブル席に案内した時から、その出来事が始まった。
 
自動ドアーが開き入店して来たその家族連れを彼は一番奥のテーブル席に案内した。

お客さんの誘導はまだ、新米アルバイト君には難しい仕事 である。

しかし、指示されるままに席についた家族は、
息子はおしぼりを取りに行き、お母さんは3人分のお茶を入れ始めた。
お父さんは、アルバイト君を呼んで、『 生ビール !』 と、注文した。

ところが、慣れない仕事で、なにを勘違いしたかアルバイト君は、
お愛想で〜す。!』 と大きな声で 返事した。

この声に、ベルトの中にいた、店長も 『 お愛想おねがいしま〜す。!』  と続けたので、
精算係のフリータのお兄ちゃんとウエスを持ったお姉さんが、急いで駆けつけて来た。

しかし、テーブルの上には、1枚の皿も無く、あっけにとられていたが、
もっとあわてたのは、3人の家族連れ であった。

未だ1皿も食べていないのに、追い出されては大変と、
家族そろって間違いである事を、ジェスチャーでアピールしたのである。
 
この事で、気落ちした彼は、その日は皿洗いに徹する事にしたらしい。

諸君の中にもバイトの経験の有る方はおられると思うが、
アルバイト君の失敗は、貴方の若い時を思い出して、笑って見過ごして下さい。

寒くなってきて、防寒具を着て回転寿司を食べておられる方を見受けます。
回転寿司屋さんの椅子の間隔はそんなに広くはありません
 
出来るだけ、防寒具、コート、ジャンパーはお脱ぎになって
寿司をお食べ下さい。
  


                    

 味見 

 
  
今日は味見 についての話をしてみましょう。
 
中華料理や、フランス料理などコックさんは、調理中に時々味見をする。
もちろん、和食の板さんも味見する。
 
素人が見ると、『そんなに味に自信がないのか?』 と心配になってくる。
 
例えば、ラーメン屋さんは麺が茹であがったかを麺を指でつぶして確認しているが、
あれも味見の一種であろう。
 
何年ラーメン屋をやっているのか? 』 と聞きたくなるが
  それにしても、熱くはないのであろうか。
 
八宝菜 をつくる時にはもっとすごい荒技 が飛び出す。
熱い中華鍋の中に手を突っ込んで味見すると言う大道芸的大技 である。
 
小父さん連中には、このパフォーマンスで ぐっ〜 と味がよくなるらしいが。
 
しかし、本当は経験を積んだコックさんは食材の品質や、その日の天候(季節)等で
微妙に味付けを変化させているらしい。(?)
 
複雑な調理ほど、料理の過程で時々味見をする必要がある。
出来上がった味は、万人が美味しいと感じる味 につくり上げられる。
 
だが、回転寿司屋さんで、味見をしている光景をご覧になった事があるだろうか。
 
ご飯を炊飯器で焚き、酢を混ぜるのであるが、その時に味見をするぐらいではないだろうか。
 
今日のマグロは美味しいかな?』 と味見している板さんはたぶん、いないであろう。
 
まして、寿司を握る毎に味見はしていないのに、
無責任に 『 美味しいですよ!』 と言うのは、まさに詐欺行為である。
(JAROに連絡しない様にお願いします。)
 
正確には 『 美味しいかも知れません?』 である。
(なんだか所さん風に理屈っぽくなってきた?)
  
回転寿司屋さんに食事をしに来た親子(小1くらい)連れがあった。
 
お父さんは、自分で好きな皿を取っては、1貫食べて、残りの1貫を息子に食べさせていた。
お父さんが味見役 なのである。
 
ところが、お父さんは貝類 が好物と見えて、
リ貝、バイ貝、ほたて貝 といろんな種類の寿司を1貫ずつ食べられて上機嫌であったが、
息子は、玉子や、のり巻きが食べたかった様である。
  
息子の前には、1貫だけ残された皿が溜まっていったのである。
仕方なく、味見役のお父さん が、頂く事になったが、
寿司の好みは、年齢、性別、懐具合(?)等に寄って、大きく変化すると言う事の証明である。
 
1人が美味しくないと思っても、他に美味しいと感じる人がいると言う不思議な食品 である。
 
西洋料理等のように、万人が好む まろやかな味に調整も出来難いのである。
  
素材の味を味わうのが、寿司なのである。
味は食材まかせです。お好きな寿司を自己責任 で取ってお食べ下さい。
(こんな事、書いていいのだろうか?)
  
   


 パセリ事件 
  
  
  
海外に赴任して仕事をしている方の話を聞く機会があった。
  
オーストラリアのゴールドコーストの回転寿司屋さん、香港や台湾の回転寿司屋さんの話など
聞いているだけで、現地に行った様な気になる。
 
今日は、小生も体験した事であるが海外の回転寿司屋さんのワサビ の話。
 
一昔前まで海外では刺身と寿司の区別 がついていなかったのではないかと思う。
 
台湾で現地の方に日本料理の接待を受けた時である。
  
インチキ臭い日本料理店に招待され、寿司を注文したのに刺身が運ばれて来たと言う事があった。
  これは単なる間違いではなく、当時、台湾では区別が、されていなかったのである。
 
わさびが添えられていれば、寿司も刺身も同じ日本料理 なのである。
その特徴的なワサビを強調するように、信じられない量のワサビが添えられてくる。
 
ところで、昔、某ホテルで知人(長谷川氏)と食事をしていた時に、
彼が食べ残したパセリの乗った皿 をボーイさんが、かたづけてしまった。
  
その時、彼はどうしてもそのパセリが食べたかったのか
『 あっ パセリ!』 と一言口走った。
ボーイさんは、あわてて、パセリの残った皿をテーブルに戻したが
 マネージャーがその光景を見てボーイの不作法を謝罪に来た。
 
ところがマネージャーは、皿に山盛りのパセリ を手に持って謝りに来たのである。

  

勿論、食事が終わった後には、山盛りのパセリ だけがテーブルの上に残された。
その時のパセリと同様に、台湾では刺身を注文するとワサビが山盛り で付いてくる。
(比喩がややこしくてごめん!)
 
デコレーションで色の美しさを楽しむのかと気にもしなかったが、
同席の中国人のワサビの消費量は、半端 ではない。
  
彼らの食べ方は、ワサビ醤油を作り、刺身であろうが、寿司であろうが、ワサビ漬け状態 で食べる。
これが現地ではおたくの食べ方 の様であった。
  
『 好吃 』 (ハオチー) は、ワサビの味で作られるのである。
 
中国人は酢っぱさに弱い様であり、酢の効いていない酢飯がお好みで
寿司の味は、ワサビの味と心得ているらしい。
  
見た目では、日本の寿司と同じであるが、味はほど遠い寿司であった。
しかし、現地の日本人には母国を感じさせる一時を与えていた。
  
海外では日本食を、ワサビの文化 として理解している様に小生には思える。
   
醤油、豆腐、天ぷら、大根などに続いて、
これからはワサビ が日本を代表する食品になるのであろうか。
  
酢屋さんとワサビ屋さんが綺麗な寿司のカレンダーを作っていますね。
  
来年は、回転寿司コンベアー屋さん、貴社の番ですよ。期待しています。
   
 


 室町幕府 



京都の二条城の近くに住んでいる知人がいる。
  
久しぶりに京都に訪れたが京都駅の変貌ぶりに北も南も判らなくなってしまい、
待ち合わせの場所を探して、回転寿司状態 (ぐるぐる回ってしまうの意)になってしまった。
  
外車で迎えに来た彼ではあったが、学生時代の先輩である小生には、頭が上がらない。
しかし、今は 和食の料理屋さん のオーナーシェフであり、仲間内では出世頭である。
  
早速、彼の案内で美味しい回転寿司を食べに行く事になったのは言うまでもない。
  
金閣寺を右に見て、もう少し車で走った所に、ひっそりとその店はあった。
  
金閣寺は室町幕府の足利義満が建てたものであるが、
その建物を模倣して建てたと思われる豪華な造りの回転寿司屋さん であった。
  
『 流石、京都の回転寿司屋さんは、すごい!』 と彼に言うと、
『大した事はないですよ。もっとすごいお店も沢山有りますよ。』 と軽く答えてくれたが、
回転寿司には詳しい小生も、こんな所にこんなお店があったのかと
感心するぐらいに、立派な和風料亭風の造りであった。
   
車は駐車場に着いた。
駐車場の隅にお店の入り口に通じる木戸があり、そこを通り抜けると石畳がある。
   
石畳や飛び石の上に落ちた枯葉を踏むと滑って怪我をすると大変なので、
店長が時々掃除しているらしい。
 
山手の方の高級料亭には、上り坂を少し登ってお店に入る造りの店が多いが、
格式ばかりが高くて閉口する場合がある。
 
このお店は、逆に少し下り坂になっているので、そんな点も考慮しての気配りが、
京都の回転寿司屋さんらしさであろう。
  
下って行く途中に、お店の自慢の金色の屋根を見て貰いたいと言う店長の企みもあるのだろう。
  
店先に着くと、格子戸の自動ドアーが静かに開いた。
  
小生はびっくりするその豪華な造りに、思わず立ちすくんでしまったが、
知人はいそいそと店内に入っていき、さらに厨房の中へと入っていった。
  
小生も何がなんだか判らぬまま、厨房へと入った。
  
そこでは、京料理で有名な ゆば が茹でられていた。
正直言ってゆばは好きでないが、ゆば寿司 とは珍しい。
 
京都では、昔、初めてそば寿司に出会った経験があり
珍しい寿司に出会える町である。
 
知人は、忙しく立ちふるまう職人と一言二言、言葉を交した後、すぐに歩き出した。
京都の町屋はうなぎの寝床の様な細長いお店が多いが、とうとう裏口から出てしまった。
 
出口を出た目の前に、なんと回転寿司屋さんがあった。
  
な、なんだ、さっきの店は彼の知人の店で、駐車場がないので止めさせて貰っただけか。
いくら京都の回転寿司屋と言っても、一寸豪華過ぎるとは思っていた。
  
その回転寿司屋さんは、ごく普通の回転寿司屋さんで、味もまあまあの75点。
 
金閣寺の近くのその回転寿司屋さんには
金色の皿が不当に多かった事だけが記憶に残った。
  
幻のゆば寿司 はいつ食べられるのであろうか?
     
 


 風水 



中国系の方が回転寿司屋さんを始める時には、風水 とか何とか占い で、
入口の方角や厨房の向きが決定される場合が多い。
 
店内の色や、花瓶の置き方までもが、占いで決まってしまう。
  
そもそも、鬼門の方角 とは、日本では 丑寅(うしとら)の方向(東北)である。
  
桃太郎の話に登場してくるに牛(丑)の角が生えていて、裸でトラ(寅)柄のパンツを履いているのも、
丑寅の方向 を意味しているのである。
 
又、桃太郎の家来に、キジ(酉)、サル(申)、イヌ(戌)が登場するが、
彼らの中で、実戦的な働きを期待できるのは、犬と猿ぐらいで、キジはそうそう戦力にはならない。
しかし、方位学的見地から考察すると、彼らは西の方位に位置しており、
西国(ガンダーラ)から来た、戦士の象徴 なのである。
 
西から来た人(宗教?)が、東北(野蛮?)の文化を破壊する話である?
  
ただ、よくよく考えて見ると、実際、鬼ヶ島の鬼はどんな悪行を行っていたのか
小生の知る限りは不明である。
  
鬼ヶ島で平和に暮らしていた鬼たちを、
桃太郎が勝手に侵略 して宝物を奪ってしまったのではないだろうか。
 
日本の鬼は本当は、心優しい鬼だったのでは無いか。
節分 で、豆をぶつけられただけで逃げ出すほどの、気の弱い動物 なのである。
 
鉄腕アトムを思い出してみると、彼の頭には、角があり、
裸で海水パンツを履いている。
さらに、力が強くて、目までが光る。
まさに、鬼のイメージ を持って描かれたとしか思えない。
 
鬼のイメージが時代と共に変化してきたのである
 
そう考えると、余り鬼門の方角 とかを気にしなくても良いと思うが、
いざ、事業を始めるとなれば、神頼み をしてしまうのが人情である。
 
例えば、科学の粋を集めた原子力発電所の地鎮祭 には、
神主さんが怪しげな木の枝 (榊)を振り回す。
ひょっとすると、日本の宇宙ロケットの打ち上げの時も、   
神主さんが、怪しげな木の枝を振り回しているのかもしれない。

日本は本当に工業先進国 なのかと不信を抱かせるが、
現代に於いても、鬼払いの儀式 は世界中で生きているのである。
 
ビルの屋上などに、よく神社が奉ってあるのを見かけるが
当社の屋上にも、回転寿司神社をお奉りするのも良いかもしれない。
  
そうなると、お供え物は稲荷寿司 ではなく、当然、にぎり寿司 だろう。
狛犬(こまいぬ)の代わりに招き猫でも並べると、それらしく見えるであろう。
 
渡る世間に鬼は無し と言う諺もある。
鬼の様な顔をした板さんも、本当は優しいのです。
 
来年の事を言うとが笑うと言われるが、貴殿も、そろそろ年賀状 を書いてはいかがかな。