昔の夢 20


 藤原紀香 
 
 
 
ラーメン屋さんとか、カレー屋さんではカウンターの上にポットに入った冷水が置いてある。
特別に辛い物好きで特別に汗かきな拙僧には、有り難いサービスである。

今年の北陸の夏は平年以上に暑く、
回転寿司屋さんで寿司を食べている方も、お茶よりは冷たい水が良く飲まれている。

大抵の回転寿司屋さんでは冷水は冷水機の水をセルフサービスで取りに行くシステムになっている。

小さなお子様連れでお越しになった場合は、通常でも
熱いお茶の変わりに、冷水を子供に飲ませているのを見掛ける。

拙僧がまだ小学生の頃、先生から 『アラビアに行くと石油より水の方が高価なのだ!』
と聞かされてビックリした覚えがあるが、
現代の日本では**のおいしい水 とか称して石油より高価な水が市場に氾らんしている。

最近の回転寿司屋さんでは、ソフトドリンクは最初の1杯分だけの料金を支払えば、
後は、おかわり自由 のお店も多くなって来た。

そんなお店では子供に、おかわりを取りに行かせて家族で飲み回しする勇敢な家族も多い。
 
清涼飲料水も種類が沢山あるが、
ポカリスエット カルピスソーダ と言う商品まである。

これらの商品は日本では、何の疑問もなく飲まれているが
欧米人 には飲みにくい名前の飲み物である。

なぜなら彼らが、ポカリスエット(pocari sweat)と聞くと、英語の sweat  のイメージがあり、
どうも汗臭い汚らしい飲み物と感じてしまう。

カルピスソーダに於いては、カウピス( cow piss ) と聞こえるらしい。
そんなソーダ( soda ) なんかは、誰だって飲みたくはない。

嘘のような本当の話ですので、欧米人に知り合いがある方は、
一度試しに、『 カルピス飲むか? 藤原紀香?』 と勧めてみて下さい。

ところで拙僧は、やはり回転寿司は  あがり (お茶) に限る。

熱いあがり は舌についた魚の脂肪分を洗い流してくれる効果があり、
常に美味しく寿司が食べられるように あがり を飲むのである。

その為に、熱い あがり が冷えないように厚手の湯飲みが使われている。

たちの寿司屋さんでは、『 あがり1丁! 』 等の威勢の良い声が聞かれるが、
回転寿司屋さんでは、セルフサービスのために あがり と言う言葉は、ほとんど聞かれなくなった。

その代わりに、あがり のバリエーションも増え、緑茶や烏龍茶などが選べるお店も多くなっている。
 
ひとくちに烏龍茶と言っても、種類が沢山ある。

業界では、烏(カラス)龍茶に対抗して、燕(ツバメ)龍茶(リャンロンチャ)なるものも発売されたが、
カラスにツバメと来れば、次は鷲(ワシ)だろうか、鷹(タカ)だろうか、それとも雀(スズメ)だろうかと
詮索するのは拙僧だけではないだろう?

全部そろえたら焼き鳥屋さんのメニューみたいになってしまう。

ところで、鷲(わし)龍茶、鷹(タカ)龍茶、雀(スズメ)龍茶は、なんて読むんだろ?
 
まさか、鳶(とんび)は出て来ないだろう?
朱鷺(トキ)なんかが美味しそうじゃない? < 朱鷺龍茶 >
 
   


 イクラの握り 

 
 
寿司の種類には、押し寿司、ちらし寿司、馴れすし、むし寿司、ふくさ寿司などと
回転寿司屋さんではあまり縁の無い寿司も多い。

しかし、一部の回転寿司屋さんではベルトの上に乗っている場合もあるので注意が必要である。
大量に生産される事もなく、限定生産の 売り切れご免 の寿司である。

郷土の味として、味わってみるのも 回転寿司マニアの義務 であろう。
まあ、駅弁みたいなもので、その場所でしか食べられないと思えば食べて悔いはない。

一般的 な回転寿司屋さんでは握り寿司 巻き寿司稲荷寿司軍艦巻き がベルトの上で回っている。

のり巻きは、細巻き、中巻き、太巻きの3種類があるが太巻きを出している店は少ない。
太巻きを食べると、寿司の消費が押さえられてしまうと考える店が多いからである。

にぎり はネタの切り方によって片身づけ1枚づけ2枚づけ鞍掛け 等の技法がある。

片身づけ は小魚の片身で1カンの寿司を握る作り方で、小アジ、さより等が握られる。

  片身づけ

1枚づけ (丸づけ)は片身にするには小さいネタを使う時に用いられ、
1カンの寿司に1匹の魚を用いる。エビなどを握る時に使う。

アナゴの1本づけなどと贅沢な寿司も時々見掛けるようになってきた。

2枚づけ は、1カンの寿司に2匹の魚を用いる方法である。
小さい甘エビが2枚づけになっているお店があるが、
極端に小さいエビを使う時は、3枚づけ、4枚づけとはしないで軍艦巻きにする。

鞍掛け は、赤貝、はまぐり、平貝等の貝類を握る場合に多用されている。

 鞍掛け

シャリの上で安定性が悪いネタは、細く切った海苔で固定する。

代表的な寿司として玉子 数の子 が細い海苔で縛られているのは良く知られている。

更に、安定性の悪い寿司ネタは、軍艦巻き と言う裏技を使う。

イクラやウニが軍艦巻きになっているのは、その為である。

腕の良い寿司職人は、ウニを握り寿司 で客に提供するが、
回転寿司屋さんでは真似の出来ないたち寿司の職人芸の世界 である。

回転寿司の職人さんで、『俺にも出来る』 と自信のある方もおられるだろう?

それでは、たちの職人さんに負けない為と、他店の追従を振り切る為には
イクラの握り寿司 を握ってベルトの上に乗せてみてはいかがですか?
イクラの細巻き なんかも食べてみたいな? 
 
話題の一品になる事、受け合います。= 商売繁盛
 
でも、イクラ何でも、イクラ5粒は駄目ですよ。 
 
 


 希望小売り価格 

 
 
ベルトの上に、活タコ の皿が2枚連続で流れてきた。

よく見ると、先頭の活タコは220円皿 に乗っているし、
後ろの皿の活タコは320円の皿 に乗って廻っている。

こんな事は、そう頻繁にはないが開店して日の浅い回転寿司屋さん で時々発生する珍事。

並んで廻っていると、目立つが少し離れて廻っていると気が付かないで食べてしまう事がある。

開店して日の浅いお店では、寿司と寿司皿の金額を確認してから頂く習慣を身に付けておこう。

板さんも、お客からは見えない場所に、こっそりとメニューを貼って金額と皿を確認しているが、
忙しくなってくると、つい間違ってしまうのであろう。

貴方も、もしこのような場面に遭遇した場合を考えて、
日頃からどう対処すべきかを心得ていないと 真の回転寿司通 とは言えない。

そこで心得のない中途半端な回転寿司マニアの貴方に、秘伝 を伝授しよう。

まずは、正規の値段より安い皿に寿司が乗せられていた場合は、
すぐに皿を確保 し、美味しく頂いてしまうべし。
他言は無用 である。

しかし、問題は正規の金額より高い皿に寿司が乗っていた場合。
その旨をお店の人に伝えてベルトから取り除いてもらったりする
幼稚な行動 を取ってはいけない。
 
そんな事をすると、単なる親切な回転寿司マニアになってしまう。

まずは、さりげなくその寿司皿をベルトの上から自分の前に移動させ、
1カンを即座 に食べてしまうのである。

2カンとも食べてしまうと証拠が無くなってしまうので、クレームを付け難くなってしまうので注意。

おもむろに一呼吸おいた後、ビックリした表情を演出し、
慌てた様に、店内の中で一番偉そうな人(店長)に声を掛ける。
(偉そうな人がいない場合は、職人で我慢?)

1カン残された皿を左手に持って、いかにも素人っぽく笑い、
『 これと同じ活タコを、さきほど食べたのですが、220円だったのですど、
この活タコは320円ですが、どこか違うのですか?』 と、
白々しく周りのお客に聞こえる様な小さな声と大きなジェスチャーで質問する。
 
(小さい声の方が、周りには良く聞こえるものである。)

店長は一瞬、気が動転してあわてるが気を取り直して寿司皿を引き取ろうとする。
だが、ここでは寿司皿は絶対に渡しては、いけない。
 
大切な証拠物件 である。

さらに、決して文句を言うような強い口調で言ってはいけない。
 
極力、丁寧に質問する事 を心掛けるべし。

間違っても 『 乾いていない寿司は、100円高いのですか?』
などとイヤミな事は言わない。心安らかに会話をするべし。

そうすれば、1分後には、新しい2カンそろった活タコ が店長の手渡しでget出来るし、
運が良ければ、無料寿司券の1枚 も付いてくるかもしれません?

是非、機会があれば(?)お試しを。 
  
 


 トンビに油揚げ 

 
 
カッパ巻きと呼ばれている寿司があるが、この言葉の由来を正確に知っている方は少ない。

こんな話を 飲み屋のお姉ちゃん に話し、尊敬されたので気を良くして執筆する事にした訳。

一般的には、カッパの好物がキュウリだからと答える人が多いが、
何故、カッパはキュウリが好きなのであろう?


カッパ君が、夜に池から出て来てキュウリ畑を荒らした話は聞かない。
(しかし、日本にいないはずの アライグマ が、ジャガイモ畑を荒らしているらしいが?)

そう言えば、当家の実家のスイカ畑のスイカが一夜にして全部無くなったのは、
トラックに乗って関西地方から来た こそどろカッパ君 の仕業らしい?
スイカ畑をお持ちの方は、怪しい関西ナンバーのトラックには要注意
(道路沿いで、安売りしているスイカ屋が怪しい?)

本物のカッパ君は、牛頭天王(ごずてんのう)と呼ばれ、カッパ天王の異名がある。

この牛頭天王をお奉りしてあるのは祇園神社であり、

祇園神社の紋が キュウリ紋 (俗称)で有る事から、キュウリをお供えしたのが始まりである。

  正式名 片喰紋 ( カタバミモン )

キュウリ紋とは、キュウリを輪切りにした時の切り口の模様のような紋。

では、次ぎに稲荷寿司の由来について。

別名、篠田ずし、大阪では きつねずし とも言われる。
関西は三角形に、関東では四角形に作られる事が多い。

キツネが油揚げが好物であるからと言われているが、そんな理由なら、
トンビに油揚げ 』 と言う言葉もあるから、 トンビ寿司 でも良いのではないか?

ところが稲荷は本来、『イネナリ 』 から来た言葉で、
もとは農耕の神様でイネの豊作をもたらす神様である。

田んぼや森そして、神社なんかにもたくさん狐が住みついていたらしく
自然発生的に稲荷信仰とキツネがドッキングし稲荷神社の使者とされた。

(ちなみに、たぬき 狸寝入り をしていたのかな?)
(たぶん 田抜き と言う名前からして田んぼでは、嫌われ者だったのだろう?)
 
今では、稲荷神社は狛犬(こまいぬ)の換わりに、狛狐(?)が奉納されているが、
諸君もご覧になった事があるだろう。

又、油揚げの色がキツネ色なのも命名の1つの要素になっている。

TVの番組の 『動物奇想天外』 では、キツネが油揚げを食っていたらしいが、
本当に好きで食べているのかは、キツネに聞いてみないと判らない。

最後に、鉄火巻きを説明しておこう。

回転寿司屋さんの鉄火巻きは、あまりワサビが入っていないが、
マグロを芯にして、ワサビをよく効かせて巻くのが鉄火巻きである。

食べた時に、体中が鉄火になる様子を表現して名付けられた。
(鉄火場でバクチをしながら食べられたと言う説もある)

おまけとして、ガレージ と言う寿司を説明。
 
日本語では車庫、シャコ を注文する時に洒落っけを持たせたもの。

ガレージ は古き良き時代の たち寿司屋さんの隠語 であるが、
今の回転寿司屋さんで通用するかは、保証は出来ない。 
 
 


 ダチョウ寿司 
 
 
 
回転寿司 海宝 (門別町 富川南)

ここの回転寿司屋さんの社長さんは、この地方では変わり者として超有名人。
例えば、世界一大きい ミラーボール を作って、ギネスブックに登録したりする人である。

元は、和食の職人さんで有るが、今回、回転寿司屋さんを開店した。

開店前日には老人ホームと障害者の施設の人たちを招待して
回転寿司を食べてもらう事を企画した。

この様な催しを実施するオーナー連中は、
通常、新聞記者等の報道関係者を招待し、これ見よがしと 売名行為 に走るのが、世間での相場である。
 
そして、必要以上に親しげに彼らと写真に修まり翌日の地方版に載るのである。
 
しかし、変わり者の社長さんは、報道関係者を一切呼びはしなかった。
 
その日の店内には、社長が体の不自由な子供に1皿ずつ寿司を手渡しする姿があり、
はじめは、おっかなびっくりで彼らを遠巻きにしていたバイトの若い女の子も
これを見て障害者へのアテンドが素直に出来る様になった。

寿司を渡し終えたバイトの女の子の目頭が赤く染っていたのが記憶に残っている。
 
寿司コラムニストとし長年名乗ってきたが、いままでにこんな光景は見たことが無く、
社長の日頃からの口癖 『 社会に貢献したい 』 の言葉が、
本物であると確信した。 立派なオーナー社長である。

ところで、見たことが無いと言えば、この店には日本でここでしか食べられない寿司がある。

読者の中で、この寿司を食べた方は絶対にいない。

変人社長が 道楽 で沖縄から取り寄せて
飼育を始めてみたら、思った以上に繁殖してしまった ダチョウ である。

この ダチョウの寿司 もメニューには書いては有るが、
注意をして見ないと、どこに書いて有るのか判らないくらいに遠慮がちに、メニューに書いてある。
教えてもらわないと、見逃してしまうだろう。

では、この回転寿司屋さんはどこに有るのかといえば、北海道まで足を伸ばさなければいけない。

そこで北海道まで行けない方のために詳細を報告しておこう。


寿司の形状 握り寿司
ネタの色 赤褐色(鴨の肉の様なこんな色)
味  桜肉(馬肉)の様な味
値段 320円 (2カン)

** 個人的感想 **
 
ダチョウ寿司 は、注文をしなくてもコンベアーの上に常に廻っているので、知らずに取ってしまうお客もいる。
 近くのペンションでは、ダチョウが散歩してる様子も見ることが出来ますが、
ダチョウの羽をむしり取らないように!
 

今日は、真面目な老、夢になってしまった。  だっちょうの? (^_^; 
 
 


 200人の食逃げ 

 
 
昨日、飛行機に乗って某回転寿司屋さんの開店シュミレーションに参加した。

開店シュミレーションと言っても、関係者がお客になってベルトの上の寿司を
力一杯、腹一杯 食べるだけである。
 
超満員の状況を作りだし、厨房やアルバイトが手際よく作業をする事が出来るかを
確認するための予行演習である。

そんな訳で拙僧には、久々の嬉しい 回転寿司食べ放題 の出張であった。

こんな事をするのは、回転寿司屋さんだけに限った事ではない。 
新築のホテルなどでも、開業前に招待客を泊めて、この様なシュミレーションを実施している。

シュミレーション開始10分前には関係者が、シャッターの半分くらい下ろされた店先に並び始めた。

そのシャッターには、『 関係者以外の方は、入店出来ません 』 と大きく書いてあったため、
おおかた50人位の業者や関係者 だけが並んでいたのです。

予定の時刻となりシャッターが開けられ、関係者が入店をし始め、
計画通りに、一気に満席になり10人位が入店待ちとなってしまった。

威勢の良い掛け声や、ごった返す店内は、商店街の中では異様な風景を造りだした。

ところがあろう事か、アーケードを行き交う人が、列に並び始めたのである。

10人が20人になり、20人が40人になり、100人ぐらいが一瞬の間に列を作ってしまい、
誰が関係者で、誰が無関係者かは、全くに判らなくなってしまった。

 先ほどまで、シャッターに貼ってあった、『 関係者以外の方は、入店出来ません 』 の貼り紙は、
シャッターと共に巻き上げられてしまい、どう見ても 本日開店の回転寿司屋さん になっていたのだ。
 
そうしている間に、第一陣に入店した 関係者 が、お店から出て来た。

本来は関係者のみ食べ放題 であるので、ごちそうさま! と支払いもしないで立ち去って行く。

この様子を見ていた偶然の通りがかりの人までもが、長蛇の列に加わり、

 更に列は長くなり200人以上ものお客が列を作ってしまい
いまさら、『 関係者のみです とは、とても言えない状態に陥ったのでした。

さあ大変である。お店の用意したネタではとても対応は出来ないと判断した店長は、
近所のチェーン店から、急いでネタやシャリを運ばせ対応したが
その人数は、増える一方である。
  
困り果てた店長は、苦肉の策として最後尾のお客に、本日終了 の看板を持ってもらう事にした。
(拙僧が最後尾役)

予定した2時間はあっと言う間に経過し、延々5時間の長丁場となってしまった。
だが、現場のシュミレーションは無事終了し、全員が拍手、拍手。

しかし、関係者専用の 毛蟹の1本付け みそ汁 は、暴徒に食われてしまった。

200人の 勇気有る 無銭飲食者 の方々へ!

ご協力を大変感謝します。  (^_^;)?