昔の夢 24


 パトライト 
 
 
 

大型回転寿司店向け自動待ち席ページングシステムと言う商品が開発された。

回転寿司屋さんに入ると、まず最初に目に入るのが、
時代劇の小道具(おふれがき)のような待ち席順番を書き込むための伝言板(?)

この書き込み板の代わりに世界で最初に自動ページング装置を設置したのが、この店。

まず、客はタッチパネルでテーブル席かカウンター席を選択する。
次に、人数を入力する。

もしテーブル席を希望して人数を2人にすると、画面は相席で良いか否かを質問してくる。
ここは勿論、相席不可を選択しよう。(お店から叱られそう?)

次に、アンケート画面が表示された。

この画面は、どんな寿司が好きか入力するのだが、
このデータをもとに、席に着いた時にはベルトの上に希望した寿司が流れているらしい?
しかし、今回は混雑しているので入力しないでおこう。

再度、記入項目を確認してから   のボタンを押す。

自動待ち席ページング装置のスピーカーからは、
順番がまいりましたらお呼びしますので、しばらくお待ちください。
と、女性の声がする。 と同時に機械から番号札 (44番) が出てきた。

なるほど、こんなシステムか! 』 と拙僧も 大いに関心。

しばらくすると、『 テーブル席をご希望の44番のお客様、ご用意が出来ました。
自動待ち席ページング装置に呼び出される。

おおっと、手元の番号札がブルっている。
お前は、ただの番号札では無かったのか? PHSの子分みたいな奴なのだな。

自動待ち席ページング装置の表示パネルには、店内の見取り図が表示され、
拙僧の座る席が見取り図に表示されている。

点滅しているのが、拙僧の予約席らしい。分かり易いのも気に入った。

田舎の中央病院の待合室のような感じもするが、
待ち時間が表示されるのは以前のシステムよりは改善されている。

寿司はそこそこの味で特別美味しいわけでもないが、
話題のシステムで店内は客で混雑している。

それとも混雑しているので、このシステムが入ったのかは定かでは無いが相当儲けているらしいな。

ところで、どのようにして、このシステムは運用されているのだろう。

ちょうど隣に座っていた客がお勘定が終わって帰っていった。

そこで食器を片づけに来た店員の動作に注目してみた。、
食べ終わった皿や湯飲みを片づけるのは、どこの回転寿司屋さんでも同じである。

そろそろ片づけも終わったと思われる頃、
なにやら、エプロンのポケットから怪しげな装置を取り出した。

初期のナポレオン・ソロが使っていた通信機(ペンシル型になる前のタイプ)のような形をしている。)

そのコントローラに準備の出来た席(空き席)の番号を入力しているらしい。

彼女の入力と同時に、入口の近くにある自動待ち席ページング装置が次の客を呼び出した。
なるほど、なるほど。

誰が考えたのであろう。
これで順番待ちの処理がスムーズに出来なかったお店も少しは改善されるかな?

開発された会社の方に一言

呼び出す際に、大きなパトライトを点滅させるのは、ちょっと、やり過ぎでは?


 
 


 金太郎飴 

 
 
アナゴ はお店によって、
柔らかな ふっくらとした身 の部分が表になっている寿司と
皮の部分 が表になっている寿司がある。

皮の部分を表にして握っているお店でも気を付けて観察すると、
アナゴのしっぽ の部分を握る時は身の部分が表になっていた。

しっぽ  は皮の部分を見せられると、いかにも 『 しっぽ  』 って感じになるが、
身の部分を見せられると美味しそうなアナゴに見えてくるのは不思議だ。

些細なことであるが、1カン1カン丁寧に握っている様子が伺われ、嬉しい限りである。

鉄火巻き等も切った海苔巻きが同じ長さになるように、
切らなければ美味しそうには見えないし、切り口も綺麗でないといけない。

太郎飴 のようには、スパッ と切るには熟練を要する。
海苔巻きを切るぐらいは大した事はないと思われるが、ところが結構難しい。

素人が切ると、切り口がつぶれてしまい北海道のバター飴になってしまう。(意味不明かな?)

そこで、登場して来たのが海苔巻きカッター。
これはどこの家庭にもよくある例のゆで卵をスライスカットする時に使う
ゆで卵カッターの海苔巻きバージョンだ。
 

海苔巻きを機械にセットしてハンドルを回すとアッと云う間に綺麗に同じ長さに切れる。
多少のコツも必要であるが、すぐに拙僧にも使えた。

羊羹やカステラなんかを切っても、綺麗に切れるだろう。

拙僧の回転寿司屋さんで出来るお手伝いが、これでまた1つ増えてしまった。

えっ、お前はその他に何が出来るかって?

主なお手伝いは、『 いらっしゃいませ! 』 の掛け声が担当だが、
ソフトドリンクの注文をこなすぐらいは出来る。

ソフトドリンクは、機械にコップ置いて商品の名前のボタンを押すだけで適量が注がれる。
飲み物によってコップの種類が違うので、これを覚える方が大変である。

ウーロン茶ウーロンハイのボタンを間違って押し、小学生にウーロンハイを飲ませた事がある。

その子供はウーロンハイが美味しかったのか半分ぐらい飲んでしまい、
真っ赤な顔をして、寿司なんか摘んでいい気分になってしまった。

うちの子を酔わせて、どうするの? 』 て、母親からクレームが来たが、
店長に内緒で無料寿司券を4、5枚渡して事なきを得た。

ところで、子供ってウーロンハイを半分飲ませただけで酔っぱらうんでね。

某スナックの お姉ちゃんは高いボトル を半分飲ませても酔わなかった。 (?_?)
嘘でも良いから少しは、酔った振りでもしろ!
 
 


 御一人様25枚 

 
 
本日開店のパチンコ屋さんで、出玉を出し過ぎたため、店のストックの玉が無くなり、
お客にドル箱の玉の換金をお願いしていたP屋さんがあった。

だが幸いにも回転寿司屋さんで皿が足りなくなったと言う話は聞いた事がない。

通常、回転寿司では寿司皿を 1人当たり25枚 を用意している。
例えば、50席のお店では、50席×25枚=1250枚 
最低でも1300枚は必要である。

その内訳も、安価な皿の方が多いのは当然であり、
高価な500円皿なんかはそうそう在庫は無い。

500円皿ばかり食べるお客がたくさんいたら、すぐにP屋の開店日状態になってしまう。
だが心配はいらない。 皿より先にネタが切れてしまうだろう?

ところで、いくら沢山の皿をストックしていても洗わない訳にはいかない。

この皿を洗っているのが、自動寿司皿洗浄機 である。

綺麗に洗った後は消毒をして、乾燥までやってのけるが、
何せ特殊な産業機器なので高価であり、
小さなお店では、パートのおばちゃんが手洗いをしているお店もある。

忙しい時は洗う時間が無く、皿がシンク(水屋)の中に浸かりっぱなしの時もあり、
職人さんから催促されてあわてて洗わなければならない事態もたびたびである。

機械で洗っても、手で洗っても、この皿洗いと云う仕事は回転寿司屋では
寿司を握る作業と同じくらいに重要な作業である。

更に、洗い終わった皿は、価格ごとに分けて職人の手元に返さなくてはならないので、
狭い厨房の中で、皿の仕分けが行われる。

価格別に分けられた皿は、専用の作業コンベアーやワゴンに乗せられたりして
ベルトの中の職人さんの所に運ばれる。

ところが、裏技を使うお店もある。
回転寿司のベルトの上に皿だけを5,6枚重なって廻している。

見慣れない光景にビックリするお客もいるが、
これは職人さんのための皿であり、お客が取ってはいけない皿である。

時々この皿を醤油皿と間違って取ってしまうお客もいるが、
初めて入る回転寿司屋では諸君も注意しよう。
 
 


 喧嘩ブリ 

 
 
拙僧と知人との2人連れで回転寿司に出掛けた時の事である。

あいにくその店は長蛇のウエイティングで、20分ほど待たされたあげくに、
テーブル席の相席 を申しつかってしまった。

知らぬ同士が顔を合わせて食事をするのはあまり嬉しい事ではない。
しかし、今回は違っていた。

と言うのも相席になったのは観光で金沢を訪れた若いギャル の2人連れである。

東京からわざわざ北陸の回転寿司が美味しいと聞いて、食べに来たとの事であったが、
彼女らは、ブリの寿司  カンパチ と呼んでいた。

ブリ カンパチ ヒラマサ は見た目にはよく似ている魚である。

ブリ  カンパチ  ヒラマサ 
しかし、カンパチ ヒラマサ は北陸では捕れない魚であり、
北陸の回転寿司でベルトの上に乗っている寿司は、全て ブリ (ハマチ)である。

早速、北陸のブリを賞味していただいた。
このお店は、天然のぶり を使用しているので、コッテリと脂が乗って 大トロ にも勝る。

ブリ 、それも12月に入って大きな雷が鳴り、
みぞれやあられが降り出す気候(ぶりお越しと言う)にならなければ、
本当に脂が乗った美味しい 寒ブリ にはお目に掛かれない。

ブリは出世魚 と呼ばれている。

拙僧の地方は こぞくら ふくらぎ(らぎ) はまち がんど いなだ ブリ の順番だ。

地方によって順番が違うし、ツバス、ワカシ、メジロ、ワラサなどの名前もある。

名前が変わる条件は大きさ(重さ)だけであるが、
何cm(kg)以上が ブリ なのかは、はっきりしない。

ブリ だ!』 、『 イナダ だ!』 と喧嘩になるくらいの大きさの ブリ (?)は
喧嘩ブリ  』 と呼ばれる。

と説明しながら食べる ブリ は格段に美味しかった。

これから、寒くなると益々魚が美味しくなってくる。
これからの季節、北陸にお越になって、寒ブリ を食べてみて下さい。

間違っても、乾ブリ干ブリ を食べないように!
 
 


 貝汁とアサリ汁 

 
 
開店したばかりの新しい本屋さんに コラムのネタ  を仕入れに行った。
だが、拙僧にはこの本屋さんでは落ち着いて本を選ぶ事が出来なかった。

と言うのも、店内は聞き慣れないBGMが大音量で流されており、
とても、あの雰囲気の中で本を選ぶ気分には成れない。

早々に目的の雑誌を購入し退散してきたが、
これは 立ち読み防止策  なのであろうか?

パチンコ屋さんでも、小父さん達には、聞き慣れない新しい音楽が流れる時がある。
こんな時はどうも調子(玉)が出ない。

回転寿司屋さんでは客の回転を早くするために、
BGMの音量は隣りの飲食店(すかいらーく)よりは大きくしているようである。

また、職人やアルバイトの おたけびも、客の回転を早める効果がある。

混み合っている時は、すでに食べ終わっている人の方に向かって 店長が必要以上の大声で、

有り難う御座いました〜!吠えるのだ。

回転寿司屋さんのBGMも様変わりしてきた。

日本の歌謡曲やポップスぐらいなら新しい曲でも我慢できるが、
BGMにジャズを流している都会の若者をターゲットにした回転寿司屋さんでは、
中年小父さんの拙僧は、落ち着いて寿司が食えないのだ。

若者には、寿司 ワイン ジャズのリズム で人気があるようだが、
間違って迷い込んだ 下着売場 にいるみたいな気分になる。

つまりは、環境音楽は味に影響を与えるので、
へい! いらっしゃい! の大声は小父さんには味を良くする薬味の一種なのだ。

こんな例があった。

お客さんが貝汁を注文したのに、アルバイトの連中が大声で
貝汁一丁! 』 と連呼した。

あまり、何回も 『 貝汁一丁! 』 と大声で連呼するので
厨房では幾つの注文があったのか判らなくなってしまって、2杯もつくってしまった。

おまけに、貝汁が蟹汁(カニ?カイ?)になってしまい、
蟹汁を注文の方? 』 と 店内中をバイトの女の子が蟹汁を持って探し回った。

その後、このお店では、 貝汁アサリ汁に変更したそうだ。

めでたし、めでたし。
 
 


 槍と剣と甲 

 
 
中年の女性のお客さんが イカ の皿を手にとって、
職人になにやら質問をしている。

どうやら、イカ の種類を聞いているようである。

この店の職人さんは、切り付けられたネタを握っているだけのようで
ハッキリとは、イカ の種類を答えられなかった。

奥から、食い倒れの人形(関西地方の方にしか判らない比喩)のような顔をした店長が出てきて、
赤イカです 』 と答えた。

赤イカ は、ちょっと高価で回転寿司ではあまり使わないイカ だ。

わざわざ、イカ の種類まで尋ねるのは、ヤリイカ では無いと知っていての御無体である。
拙僧は、このご婦人を なかなかのグルメ と見た。

イカ は、スルメイカ、アオリイカ、モンゴイカ等が有名である。

赤イカ   スルメイカ  ヤリイカ   ケンサキイカ  アオリイカ 
関西では甲(こう)イカ も寿司ネタとしてよく使われて
甘みの有る味は老若男女を問わずに食べられている。

同じイカでも種類によって値段が違うし、もちろん 味も違う。

一概に、あそこの店のイカは値段が高いと比較するのは危険であり、味の違いを知るべきである。

地方の回転寿司屋さんは 持ち帰り寿司 を注文で握ってもらえるお店が多いが、
持ち帰り用の寿司の イカ とベルトの上の イカ を種類の違うイカで握っているお店もある。
(ベルトから直接、折りに詰める方式の持ち帰り寿司は同じネタ)

これは極端な例であるが、持ち帰りの寿司の方が良いネタを使う場合が多いらしい?

イカ の身に隠し包丁を入れて有り食べやすくしてある回転寿司屋さんがあった。
この隠し包丁は醤油が適度にネタにからみ味を更に引き立てる。

しかし、こんな丁寧な仕事をしているのは、開店日だけに雇われた助っ人たち寿司職人 で、
忙しい回転寿司では なかなか出来ない仕事である。

拙僧の田舎は富山であり、ここはホタルイカ が有名である。

ホタルイカ 
ホタルイカは、5〜8cm のイカで産卵の為に海面に浮上してくるところを捕まえるので
雌しかいない。
シシャモの雄やホタルイカの雄は滅多に見ることはない。

一度、富山の ホタルイカの寿司 でも食べに来て下され。

さて、イカの中でも一番美味しいイカは、剣(けん)サキイカかな、それとも 槍イカかな?
待て待て、甲(かぶと)イカてのもあったな〜。