昔の夢 9


 誤差 0.5g 


   
プロにしてみれば、当然の事でも、一般人にしてみれば、ビックリする様な事は沢山ある。
 
ステーキ好きな小生は、偶にオーダーカットの肉を購入してステーキパーティを催す事がある。
  
行きつけの肉屋さんに行き、300g のサーロイン(フィレは余り好きではない)を4枚カットして貰う。
 
店員に注文すると、店員は奥の大きな冷蔵庫の中の、
いかにもブッチャーと言う体型の親父 を呼びに行く。
 
オーダーカットは親父さんしか出来ない業なのである。 
この親父は冷凍人間なのか、いつ訪れても冷凍庫の中から出てくる 不思議な親父である。
   
親父さんがカットした肉を丁寧にハカリの上に乗せると、302g であった。
 
お客様、2gもオーバーしましたがよろしいですか?』と、わざとらしく承諾を乞うのが常である。
 
なかなかの芸人(職人)であり、小生はそのパフォーマンス に乗せられてしまっているのである。
 
だが、肉の横に付いている脂身を2g削ぎ落とせば、丁度 300gになるのに、
どうして2g にこだわるのか判らない。
2gの脂身を切り取る事は、彼のプライドが許さない のであろうか?
 
デパートの地下の食品売場で冷凍鮭の切り身を切り売りしているおばちゃんもすごい。
 
お客を呼び込みながら、軍手で冷凍鮭 を切っているが、
しっぽの部分と頭部の身の付き方のバランスをうまく考えて切っている。
  
どこの部分も同じ値段なのだが、どの切り身が得なのか迷うほどうまく切ってある。
おばちゃんは、重さではなく見た目の量 で切っているのである。
  
パックされた鮭の切り身を買う時は話が違う。
重さに比例した価格が機械的にプリントされているので、
食べられない不要の部分の少ない鮭を選んだ方がもちろん得である。
 
回転寿司屋さんでは、こんな光景を目にした。
経験の有りそうな職人が、若い職人にネタの切り方を教えているのである。
 
切り方と言っても、包丁の使い方等では無く、このお店のネタの大きさ を教えているのである。
 
若い職人がネタを切って、ハカリの上に乗せ22gから約0.5g単位で18gまで切り分けていく。
すごい業である。
  
このお店では、トロは20gであるので、何回か20gで切り付けて練習するが誤差0.5g てとこかな。
ネタの種類を変えて、それぞれのネタの重さで練習しているのであるが、驚嘆した。
 
一般的に回転寿司屋さんの、シャリの重さは、お店によって18gから25gであるが、
これも、職人が握ると、5粒は違いが無いそうである。 
さて、拙僧の本職は、、? お経でも覚えるか。
観自在菩薩行深般若波羅蜜多時、、、云々。

 
 


 85度 

 
 
お湯のお話です。
 
回転寿司屋さんの、蛇口(グラスフィーラ)から出るお湯は水道水 を電気で沸騰させている。
中には、浄水器で美味しい水にして使用していたり、井戸水を利用しているお店もある。

同じ様な構造物として大衆浴場の蛇口を想像出来るが、
お風呂屋さんでは、お湯の配管の上流で使用すると熱いが、下流では少し温度が下がる。
お湯を使うタイミングによっても、熱くなったり、ぬるくなったり する時がある。
     
お風呂屋さんのお湯は、水で適温に調整して体を洗ったりするので、
温度差は余り気にしなくても良い。

気の利いたお風呂屋さんなら、サーモスタット付きの蛇口が付いている。

しかし、回転寿司屋さんでは、お茶を入れる為のお湯であり、余り熱くても、又冷たくてもいけない。
一般的に85度 を目安にして、お店で調整している。

ところが、回転寿司屋さんの蛇口にはサーモは付いていない のである。
 
沸かしたお湯をただパイプに通すだけであれば、
お風呂屋さんの様に温度差が発生してしまい下流の蛇口では冷たいお湯しか出てこない。

そんな事を気にして寿司なんぞ食っている人は、いるわけがないが、
寿司コンベアは独特の秘密の構造 になっているので、貴殿だけ に説明しておきたい。

今あかされるパイプの秘密 とは。

パイプの中のお湯を常に循環させ、どの蛇口も同じ温度でお湯が出るように工夫されているのである。
 
常にお湯を循環させている為、配管全体が均一な温度となり、
どこの蛇口でも、同じ温度のお湯が出るのである。

その為に蛇口は結構、熱くなってしまいカバーをしなければいけなくなったが......。

座ればまずお茶であるが、湯飲みの中へお茶っ葉(ティーパック)を入れて
湯飲みで蛇口のゴムの所を押えてお湯を注ぐ。
 
これが、初めて回転寿司屋さんに訪れたお客は知らないので
周りをきょろきょろ見渡してお茶を入れているので、すぐに初心者と判る。
 
今では大抵が、小金が有りそうな、おじさん、おばさん が多い。
   
2杯目のお茶を飲む時に、お茶っ葉が取り出せない(糸が付いていない)ので、
2つ目のお茶っ葉を一緒に入れてしまう方や
中には几帳面な方は割り箸でつまみ出したり、ずぼらな方は二番茶 を味わっている方もいる。
 
だが、正直に言って余り良いお茶ではないのであろう。
家庭で飲んでいるお茶よりは、ランクが下の様な気がする。
  
そこで、どうしても、ワタリガニになってしまう。
最近は、アサリや鯛汁などバリエーションも豊富になってきた様であり、
回転寿司屋さんの努力に感謝感謝。 
貴殿も、たまには、お茶ばかり飲んでないで汁物 でも注文してみては。     
 
 


 オンデマンド 

 
  
オンデマンド で寿司を食べることが出来るのが回転寿司屋さんである。
ファーストフードの中でも待たずに食べられる、ウルトラ・スーパーファースト フードである。

先日、都心のある立ち食いそば屋 さんに入った時も、そば の出されるスピードにビックリした。
券売機で食券を買うと同時にそば ゆで始める のである。
    
券売機のスイッチと連動して調理場に音声合成でコンピュータが指示を出している様である。

回転寿司屋でも、インターホンで寿司を注文する方法を採用しているお店もある。

自販機でタバコを買う様にトロのボタンを押してトロが出てくるコンベアを開発した会社があった様だが、
小生なら、某私鉄のホームの様に 『貴方のトロは1m先です』 とか 『30秒後に到着します』 とか表示させ、
待っているお客を全員、パブロフの犬 にしてしまうのも面白い。

21世紀の究極のコンベアはこんな物かもしれないが、現代ではまだ受け入れてもらえそうも無い。

やはり寿司の顔を見てからでないと落ち着かない。

タバコやコーラはどれを買っても、全く同じであるから、サンプルを見るだけで、ボタンを押して購入する。

しかし、事、寿司となれば、同じトロでも日本人はちがいがあると硬く信じて、こだわっているのだろう。
ブラインドテストなどで実験してみると同じ店の寿司なら、たいした違いは無いのかも知れない。

スーパーの肉屋さんや魚屋さんでパックされた商品を品定めしているおばさんの心理(老婆心)と同じである。

肉屋さんは、、見栄えを良く赤身ばかり見える様にブタ肉 をパックすると
開けた時に、内側の見えない場所に脂身が入っていると、
おばさんは二度とその店では買物をしないらしい。
そこで、わざわざ脂身をお客に見せる様に、パックするそうである。
   
その点、寿司はスケルトンまではいかないにしても、見えないのはネタの下のワサビぐらいである。
その様な寿司であるから味より見た目の良し悪しにこだわるのかも知れない。

好みの寿司を次から次ぎにデジタル感覚 で食べている方を見掛けると、
なぜ、あんなにデジタル的 に食事が出来るのか不思議である。
    
デジタルと言えば、小生の嫌いなカロリーメータ と言うシロモノがあるが、
これも同じ食材は全て同じカロリーとして重さだけで決定してしまうデジタルマジックなマシンである。
   
バイオ技術で、大トロだけを、ビーカーの中で寒天の上に乗せて増殖させて
トロ身が出来る様になれば均一なトロが出来るのであろうが、
重さだけでカロリー計算を行い、今日はカロリーを取りすぎた などと言うのは、
デジタルシンドローム 健康病 になっているとしか思われない。
 
メニューにカロリーを書き込んである飲食店もあるが、タバコのニコチン量の記載と同じと考えているなら、
 
貴方の健康を損なうおそれがあります。食べ過ぎに注意しましょう
ぐらいの事を書いてみたらどうであろう。
  
一寸前に話題になってた PL法的発想法 では無いが、
お茶を汲む時は、充分に注意して、股間を火傷しない様 お願いいたします
と、カウンタにワーニングを張らなければいけないかな。
                                   
  


 くしゃみ3回 
 
 
 
寿司職人は職人気質 の方が多い(?)
職人の修行と経験が創り出す寿司は明らかに文化 である。
    
ファミレスで注文をした食品が1品でも出てこないと、文句を言うが、
回転寿司屋では、注文した寿司が出てこないと、あきらめてしまう人が多い。

聞こえていて握ってもらえないのか、忘れているのか、判らないが気分は最高に悪くなる
 
特に高価な寿司を注文した場合はまだ文句を言いやすいが、
玉子とか、鉄火を注文して待っている時は、心の中は葛藤状態 である。

これはお客が寿司職人と言う者は、
職人気質の持ち主であり文句の言いにくい親父的存在である 』 と認めているからである。
現在の回転寿司屋ではそんな事は無いはずである。

一昔前には、一般庶民が夕食に寿司を食べる等と言うことはなかった。
日常会話に寿司屋の勘定の不明朗さ が話の種になるぐらいである。
 
折り詰めにしてもらい経費で誤魔化し家族に持ち帰った輩(やから)も
昔は沢山いたので、余計に不明朗 なのだろう。

交通機関が未発達で、活魚を遠方に輸送する事が出来なかった時代に、
新鮮な魚で握った寿司をお客に提供するには、それなりのコストと技術が必要であった。
しかし、現在では、小生でさえ観光地で買った生蟹や生海老を手軽にクール宅*便
自宅や知人に届ける事が出来る。
 
コストも技術もあまり必要とはしない。

寿司ネタの主流をなす食材は水産資源 が主であるが、
中でも世界的な傾向としてマグロは減少の傾向 にある。
 
当然、寿司屋は、安定供給を希望しているので、
自然界(海)を相手で漁をしている漁師さんは大変な苦労を強いられている。
 
関東では、何かとマグロ、マグロと目の色を変えているが、マグロだけが寿司ではない。
 
かって、鯨が店頭から姿を消した様に、マグロもそろそろ危機が報じられている。
国際会議で文句を言われる前に、
マグロはお一人様1皿限定 』 などと見かけの努力をしても良いのではないだろうか。

そこで、養殖物の登場となるが、マグロの養殖はもう少し先の様である。
 
ハマチを筆頭に鯛、海老、アワビ、平目等は、養殖物に依存する事で、安定で、安価に供給されているが
これらの食材を天然物でまかなうには、やはり、それなりのコストを覚悟しなければならない。

夏の長雨で野菜が高騰しているが、全国的に魚不足 を引き起こす事態が発生しないとも限らない。
今年の冬(?)は 『 赤潮の異常発生で養殖している魚が大量に死亡 』 するかも知れません??
ハマチや鯛が食べられなくなるかもしれません。

赤潮が発生していない今がチャンス です。
  
養殖魚の寿司を食べると風邪には掛かりません。
又、風邪をひかれている場合も早く治ります。(本当ですよ)
 
くしゃみ3回、ハマチ3皿 ♪
  
                                 


 頑張れ店長! 

  
  
回転寿司屋の若い店長を見ると、大丈夫なのだろかと他人事であるが心配になる。
 
衛生管理、接客、アルバイトの指導などお店を運営するのに
必要な行動力と判断力を会得しているのだろうかと、心配になる。
 
回転寿司屋は、一般の飲食業よりは接客の業(わざ)は必要ないようであるが、
お客の中には、いろいろと個性的なお客も来店する。
    
若い方(ガキ)から、年寄り、酔っぱらい、美形、非美形、など、
一人、一人が大切なお客であると言う信念を持って商売をしなければ、繁盛店にはなれない。
 
挨拶や返事の仕方をお客に寄って使い分ける様では、修行が足りないのである。
店長は寿司(料理)の腕前はもちろんであるが、お店を運営する技能 も問われる。
   
切れ者店長は、常連客の貴方が、どんな寿司が好みであるか知っているのである。
ベルトの内側からお客を見ると、寿司の好みや、食べるスピードなどから何皿ぐらい食べるかが、
予想出来、ベルトにどの様な寿司を乗せたら良いかが判る。
 
なにげなく廻っている寿司にも、店長の考えが反映されている。
カウンタに座って好みの寿司が廻っていなければ、失格である。(アイドル期間は除く)
 
初めて訪れたお客でも、最初に取った寿司でお客の好みを見破らなければならないのである。
お客である小生なども、内心、『今握っているあの寿司を 』 と狙っているが、
店長の方も寿司を握りながら、『この寿司を狙っているな 』 と気付いているのである。
 
下手をすると、小生の財布の中身まで知っているのか、
持ち合わせの少ない時など、カッパ巻きが多く廻って来る様な気もする。
  
もちろん、店長は近所の回転寿司屋にも目を配っていなければいけない。
新しい食材を他店で廻している等という情報にはめざといのである。
 
明日の天気や町内の運動会の開催の情報まで知っていないと、食材の仕入れは出来ないのである。
同じチェーン店の店長仲間からは、早々に『今月は売上目標達成で〜す 』 などイヤミっぽくFAX が入ると
いらいらするのは、どこのサラリーマンも同じの様である。
 
立地条件が悪い とか、貧乏人の多い町 だとか不満を言わずに、
美味しい寿司で勝負すれば負ける事はない。
 
繁盛店の店長になるには日夜、修行を怠る訳には行かないのである。
 
頑張れ店長! 独立が待っている
 
若い店長のいる回転寿司屋に入った時は、是非、1皿多く食べてください。
そして、『美味しかった 』 の一言を。
 
11月1日は 寿司の日 である。 でも何で11月1日なのだろう。
4月4日(スシ)の方がゴロ合わせで良いのではないかな?

                                     10/31記
 
 


 招き猫 

 
 
商売の神様と言えば、エビス 様が有名であるが、具体的にエビス 様の事は余りよくは知られていない。
本来、彼は航海安全の神 であったが、いつの間にか七福神に仲間入りさせられている。

七福神の仲間には、大黒様 もはいっているが、彼もよく商売の神様として店先に飾られている。
 
エビス様は大黒様の六代前の爺さんの兄弟であり、同じ宝船に乗船する事は出来ないはずである。
お互いに神様だから、出来るのかな。
  
だが、ランクから考えるとエビス 様の方が格段に上である。
かの有名な、イザナギイザナミ の子供である。
 
妖怪まねき猫 と一緒に並べるのは大きな間違いである。
 
まして、妖怪まねき猫 が座布団に座っているのに、
エビス 様が土下座していては、商売繁盛店 にはなれない。


 
現代に於いては、神様のランキングをハッキリ承知している方は少ないであろうが、
正月の初詣は、やはり、ランクの上の神様に人気があるみたいである。
  
子供の頃に聞かされた昔話には、神様とか、魔法使いが出てきて、
なにか一つだけ願いを叶えてくれる  』と云う場面がよくある。
 
小生は子供の頃からひねくれ者であったのか、
もしそんなことを云われたら、この様にお願いしようと思っていた。
 
その願いとは、『 願い事が叶う回数を1回だけとは云わずに100回にして下さい 』とか 
僕を魔法使いにして下さい  』とお願いしたい。
 
これでも、1回であるので、文句はないはず。
 
神様もいろいろ面白いグッズをお持ちの様である。
ある老夫婦が善行の褒美(ほうび)として、神様から、お米が出てくるひょうたん をもらって、
平和に一生をおくったと言うストーリーがあった。
 
ここで、ひょうたん からどの位のお米が出たかを計算してみよう。
一回の食事に2合のお米を消費したとして、一日3回で、老夫婦が60歳で90歳まで生きたとすると、
2合×3食×365日×30年=65700合=6570升=657斗
657斗÷4斗=164俵 (1俵は4斗) 1俵を16,000円と換算すると262万円 となる。
 
浦島太郎 の話では、太郎は竜宮城 へ行ってご馳走になったが、刺身は食べさせてもらえたのだろうか。
ひらめの舞踊り を鑑賞しながら、えんがわ は食えないだろう。
 
しかし、現代の回転寿司屋さんは、竜宮城に勝るとも劣らない竜宮城である。
  
次から次ぎにひらめ おどり の寿司が廻ってくる。
 
足りない物は、若い 乙姫さんぐらいなものである。